日本の仏教のベース 〜すべての人が成仏できる〜
 
天台宗は、日本の仏教の基礎を作ったとも言われる宗派。
唐に留学した最澄が当時の最先端情報を日本に持ち込んで開いた天台宗の本山、
比叡山延暦寺では多くの優秀な僧侶たちが学び、そこから巣立った僧侶たちが
鎌倉仏教など新しい仏教を生み出していきました。


■開祖  最澄(さいちょう)

■本尊  すべての如来、菩薩、明王、諸天は、本仏・釈迦牟尼仏の姿を変えたものと解釈され、特定の仏を本尊とすることはありません。
一般的には、阿弥陀如来、釈迦如来、観世音菩薩などを本尊とすることが多いようです。

■経典  『法華経』(正しくは、妙法蓮華経を根本経典とします。)

■本山  比叡山延暦寺 (総本山)

■寺院数  約4400ヶ寺

■信者数  約118万9千人

■日常の勤行  
  【朝】仏飯、お茶、花、供物などをささげます。
     灯明をともし、仏前に正座。 線香かお香をたき(1〜3本・1〜3回)
     鈴を2回鳴らします。
     「法華経」の経典を軽くいただいて、左手にのせ、右手でめくり経本を読みます。
     終わりは鈴を3回鳴らし、経本を閉じ、合掌礼拝します。
  【夕】「阿弥陀経」を中心として、お経をあげます。
     今日1日の無事を感謝して、朝お供えした仏飯や供物をさげます。

■天台宗の葬儀
 @僧侶が葬家に出向き、枕経をあげます。それから、かみそりを頭に当て、剃度式を
   行います。 これは出家する儀式なので、このとき戒名をつけてもらいます。
 A天台宗の教えの中には、文字で明らかになった釈迦の教え「顕教」と秘密の
   教え「密教」の2つが含まれています。したがって、天台宗の葬儀も顕教儀礼で
   ある法華懺法(ほっけせんぽう)と例時作法(れいじさほう)(阿弥陀仏の極楽浄土へ
   往生するための法要儀礼)と、密教儀礼である光明供(こうみょうく)(光明真言を
   念誦する法要)が行われます。
 B「臨終の鐘(かね)」として、小さな鐘(打ち鳴らし)を鳴らします。
   これは、伝教大師が臨終のときに鐘を鳴らし続けているうちに安らかに往生された
    ことに起因しているとされています。

■天台宗の宗派行事


 
 
 
修法によっては人は仏と一体になれる 〜即身成仏〜
    
平安時代、空海によって開かれた真言宗。
空海、弘法大師は唐に渡り、たった2年間で密教の教えのすべてを修めて帰国し、のちに高野山を
修行の場所として開山。
その教えは、密教とされ、僧侶が他言することは御法度・・・。
そんな奥深い真言宗です。


■開祖  空海

■本尊  本来は、大日如来。
       釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来、そのほかに
       観音、文殊、地蔵などの菩薩なども祀られること
       もあります。

■経典  『大日経』、『金剛頂経』(こんごうちょうきょう)、と『蘇悉地経』(そしつじきょう)を
       加えて、 『三部秘経』として尊重されています。
      これに、『瑜祇経』(ゆぎきょう)と『要略念誦経』(ようりゃくねんじゅきょう)を
       加えて 『五部秘経』と呼びます。

■本山  金剛峰寺(こんごうぶじ) ・・高野山真言宗

       知積院(智山派)、長谷寺(豊山派)、仁和寺(御室派)、醍醐寺(醍醐派)、
       大覚寺(大覚寺派)、勧修寺(山階派)、泉涌寺(泉涌寺派)、
       教王護国寺(東寺・東寺真言宗)、根来寺(新義真言宗)

■寺院数  約13000寺

■信者数  約1千5万人

■日常の勤行  
  数珠の珠は、108個が正式で、略式で54個、27個のものもあります。
  お勤めの初めと終わりの祈願のときは、左手人差し指に緒留(おとめ)、
  右手中指に達磨のほうをかけ、房はどちらも手の中に。
  そして、右手を下に、左手を上に三度こすります。

  日常勤行は、仏壇の扉を開けて、仏飯と茶湯や水をお供えし、
  ロウソクと線香を供えます。

  仏壇の正面に正座して合掌し、三度礼拝したあと、三度数珠をこすり、
  数珠を一連にして、左手首にかけて読経します。
  なお、お勤めの作法は、真言宗の各派によって少しづつ違います。

■真言宗の葬儀
  導師といわれる僧侶が、亡くなった人に戒を授け、仏弟子として、引導作法という
  三蜜の法を行います。
  この間、他の僧侶によって、『般若心経』が唱えられます。
  そして、『諷誦文』(ふじゅもん)を読んで、新精霊の加護が祈念されます。

■真言宗の宗派行事



南無阿弥陀仏ととなることで救われる 〜専修念仏〜

南無阿弥陀仏と唱えれば、どんな人間でも阿弥陀如来の救いを得ることができるとした、
その教えは当時の皇室・貴族といった既存の仏教信者だけではなく、
お寺に寄進する資産もなく、仏教を学ぶ機会もない、一般庶民の心をとらえました。


■開祖  法然

■本尊  阿弥陀如来
      (観音菩薩、勢至菩薩を脇寺とする阿弥陀三尊)
       もあります。

■経典  『無量寿経』(むりょうじゅきょう)、『観無量寿経』、
       と『阿弥陀経』

■本山  智恩院(ちおんいん) =総本山


■寺院数  約8300寺

■信者数  約655万千人

■日常の勤行  
  日課数珠を用い、合掌のときは、両手の親指にかけて手前に垂らします。
  浄土宗の場合は、両手をこすり合わせたり、数珠を鳴らしたりはしません。

■浄土宗の葬儀
  西方極楽浄土に旅立つと考えられているので、死装束を着させます。
  枕飾り(白い布に三具足、水、樒、枕飯、枕団子)を整え、枕経をあげて
   もらいます。

■浄土宗の宗派行事


 

 


自分では仏になることはできない  〜他力本願〜

浄土宗の開祖、法然上人の弟子となり、そして自ら宗派を立ち上げることとなった
親鸞上人。
「南阿弥陀仏」の念仏を中心とした、その独特の教えで人びとに安らぎを与えて
いきました。


■開祖  親鸞



■本尊  阿弥陀如来
      (阿弥陀如来の仏像や絵像(大谷派は絵像の掛軸)、
       「南無阿弥陀仏」の名号など)

■経典  『仏説無量寿経』(ぶつせつむりょうじゅきょう)、
      = 『大無量寿経』または、『大経』ともいわれる。
 
       『仏説阿弥陀経』

      『仏説観無量寿経』

      上記3つを根本として、あわせて『浄土三部経』という。

■本山  西本願寺 (本願寺派)
      東本願寺 (大谷派)
      専修寺   (高田派)
      興正寺   (興正派)こうしょうじ
      仏光寺   (仏光寺派)ぶっこうじ
      錦織寺   (木辺派)きんしょくじ
      毫摂寺   (出雲路派)ごうしょうじ
      誠照寺   (誠照寺派)じょうしょうじ
      専照寺   (三門徒派)せんしょうじ
      證誠寺   (山元派)しょうせいじ


■寺院数  約2万1千ヶ寺

■信者数  約1289万6千人

■日常の勤行  
  本願寺派の供養の手順は、合掌礼拝、『正信偈』(しょうしんげ)、『和讃六首』、
   『御文章』、 『領解文』(りょうげもん)、です。

  大谷派の起用の天淳は、合掌礼拝、『正信偈』、『念仏・和讃』、『回向』、
   『御文』と なっています。

  鈴は読経のとき以外はたたきません。

■浄土真宗の葬儀
  @浄土真宗にとって通夜から葬儀の儀式は、故人との別れを告げるだけ
    ではありません。 阿弥陀如来のはからにより、浄土での再会を確かめ
    合う法会もあるのです。
    そして、死をあるがままに受け入れ、生死する命を精いっぱい生きて
     いくことこそ、 人間の生き方とするので、死を穢れとはみません。
  A戒名という言葉は使わず、法名(ほうみょう)といいます。
   法名は2字で「釈●●」「釈尼●●」となります。

■浄土真宗の宗派行事



 


自己の存在について知るということ
臨済宗建長寺は人生を切り開いていくにふさわしい強さが感じれられる寺院です。
その強いイメージはゆるぎない、鎌倉時代から引き継がれている教えから
もたらされているものです。


■開祖  栄西

■本尊  特定の本尊はありません。
       
       主に、釈迦牟尼仏、薬師如来、大日如来、
       観世音菩薩、達磨大師、臨済義玄などを本尊と
       することが多いようです。        

■経典  釈迦の悟りの内容を文字や言葉で伝えることが
      できないとする禅宗では、特定の経典は定めない
      というのが原則。
  
      慣習として、『金剛般若経』(こんごうはんにゃきょう)、
      『りょう厳呪』(りょうごんじゅ)、などのほか、『座禅和讃』が読誦されます。

■本山  妙心寺  (妙心寺派)
      建長寺  (建長寺派)
      円覚寺  (円覚寺派)えんがくじ
      南禅寺  (南禅寺派)こうしょうじ
      方広寺  (方広寺派)ほうこうじ
      永源寺  (永源寺派)えいげんじ
      仏通寺  (仏通寺派)ぶっつうじ
      東福寺  (東福寺派)
      相国寺  (相国寺派)しょうこくじ
      建仁寺  (建仁寺派)けんにんじ
      天竜寺  (天竜寺派)
      向嶽寺  (向嶽寺派)こうがくじ
      大徳寺  (大徳寺派)だいとくじ
      国泰寺  (国泰寺派)こくたいじ
      興聖寺  (興聖寺派)こうしょうじ


■寺院数  約5千700ヶ寺

■信者数  約100万人


■臨済宗の葬儀
  故人を仏弟子として導き、仏の悟りの世界に送るためのものです。
  最後に大声で、「喝」を与えます。


■臨済宗の宗派行事


 




常に社会の苦を己のこととして考え、その苦に寄り添う


「只管打座」(だかんだざ)という禅宗のスタイルを道元禅師が確立した宗派。
道元禅師が解釈した曹洞宗の教えに従って、ひたすら座禅し、
お釈迦様の本来の教え「正伝の仏法」を伝えていきました。


■開祖  道元

■本尊  釈迦牟尼仏。

       本尊の左右には、 宗祖・道元禅師と曹洞宗発展の
       礎を築いた瑩山禅師(けいざん)の絵像を祀るのが、
       決まりです。
      

■経典  『般若部』
    
       (『大般若経』、『般若心経』、『金剛般若経』、
        『金剛般若経』など )と、

       『法華部』(法華経)、
 
       『阿含部』(梵網経)、

       『華厳部』(華厳経)、
      
       『涅槃部』(涅槃経)、など。


■本山  永平寺 、 総持寺(そうじじ)

■寺院数  約1万5千ヶ寺

■信者数  約157万9千人



■曹洞宗の葬儀
  曹洞宗では、枕経のことを臨終諷経(りんじゅうふぎん)といい、「遺教経」(ゆいきょうぎょう)、
  「舎利礼文」(しゃりらいもん)が三回読誦されます。

  葬儀は仏弟子となる手続きが重視されるので、得度式の髪を落とす作法、剃髪の儀式と
  授戒の儀式があります。

  仏の教えに生きることを誓う「三帰戒」(さんきかい)、
  釈迦の戒めを守り、より多くの人々のために生きることを誓う「三聚浄戒」(さんじゅじょうかい)、
  仏弟子が犯してはならない10ヶ条の戒めをまとめた「十重禁戒」(じゅうじゅうきんかい)、
  の3つを合わせた十六条戒を1つひとつ導師が授け、
  最後に血脈を霊前に供えます。

  血脈とは仏の教えや戒律が師匠から弟子へと伝えられるさまを
  身体の血脈にたとえたもので、釈迦から本人までの系譜書のことです。

■曹洞宗の宗派行事


 


自分だけでなく、みんなの幸せを感じながら生きる


水源を掘り当てた、処刑されそうなときに刀が3つに斬れて斬首刑を免れたなど、
数々の伝説を持つ日蓮聖人が開いた宗派。
「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えれば、救われるという教え。
 


■開祖  日蓮

■本尊  「南無妙法蓮華経」の七文字

       七文字のまわりに、十界や諸尊の名を書いた
       「十界曼荼羅」(じっかいまんだら)が正式な本尊。
      

■経典  『法華経(妙法蓮華経)』、
    
       『無量義経』(法華経の開経)、
 
       『観普賢菩薩行法経』(法華経の結経)、

       日連宗では、上記3つの経を「法華三部経」と呼びます。     


■本山  総本山 久遠寺

      総本山に準じる格式がある寺を「大本山」、
      地方の由緒ある寺を「本山」と呼びます。

■寺院数  約5250ヶ寺

■信者数  約361万人


■日蓮宗の葬儀
  日蓮宗の葬儀は、霊山浄土へ故人を旅立たせる儀式とします。
  そのために、参列者全員でお題目を一心にとなえるのです。
  そして、それは、人の死を前にして自分の命の尊さを確認する機会でもあるのです。

■日蓮宗の宗派行事




禅を通じて文化、人の心の在り方を伝える。

鎖国していた江戸時代の日本に新しい仏教を運んできた隠元禅師。
その斬新さは、建物、教え、法要のスタイルなどいろいろなところで、見ることができる。


■開祖  隠元

■本尊  特にありません。

       「釈迦如来」「薬師如来」「地蔵菩薩」など、
       を祀ることが多いようです。      

■経典   決まったものとしては特にありません。

       日常読まれるお経をまとめたものを『禅林課誦』
       (ぜんりんかしょう)といいます。      


■本山  万福寺

      中国の黄檗山万福寺を模して作られている。

■寺院数  約460ヶ寺

■信者数  約35万3500人